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このコラムをお読みの方は、電位差滴定の一般的な原理をすでにご承知のことと思います。多くのラボではクロマトグラフィ法や分光法が好まれていますが、今でも滴定法は様々な種類のサンプルを分析する方法として用いられています。滴定法が他の分析手法と一線を画すのは、それが絶対的な手法(一次法とも呼ばれる)だからです。分析対象物が既知の試薬と化学量論的に反応する場合、滴定法は公的な分析規格に限らず、常に選択される分析方法となります。

現在、滴定法は私が学生だった頃とは比べものにならないほど近代的になっています。当時はまだガラスビュレットと指示薬を用いており、一貫性のない測定結果に悩まされていました。今では、ほとんどのラボで滴定装置自体が滴定溶液の自動添加と終点の自動認識を行っておりますが、まだ多くの手動による作業があり、それがうまくいかずに信頼できない測定結果につながることがあります。

How to avoid titration errors in your lab

スタンドアロン型の滴定装置を用いている場合、測定はラボの分析技術者にとって装置につきっきりの仕事となります。サンプルを準備するだけでなく、電極とビュレットチップを測定溶液に浸漬させた後、滴定を開始しなければなりません。滴定装置を用いる場合、滴定溶液の添加と測定結果の計算は自動的に行われますが、測定終了後の洗浄や次のサンプルの準備は、依然として分析技術者の仕事となります。多くの場合、滴定に要する時間は3~5分もかかりません。この短時間のため、滴定中に分析技術者が完了できる他の作業は、そう多くはありません。

完全自動化された滴定システムを用いると分析作業の効率が向上するだけでなく、より優れた再現性の高い測定結果も同時に実現することができます。

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貴重な時間を節約する

時間の節約は、自動化システムを使用する最大のメリットの1つです。節約できる時間の一般的なところを知るには、この図をよく見てください。自動滴定装置がどれだけのステップをこなし、分析技術者がより多くの時間を他の作業に割くことができるか、おわかりいただけると思います。

適切な分析は、正しい液体のハンドリングから始まります。

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滴定におけるサンプルの測定は、滴定溶液の添加以外にも、いくつかの手動作業から成り立ちます。サンプルと分析の種類に応じて、さまざまな種類のサンプル準備作業が必要になります。最も一般的なものは、サンプリング、希釈、補助試薬の添加、pH調整、または温度調整です。

サンプルを正確に分取することは、困難な作業です。多くのアプリケーションでは、サンプルが固体(粉末や錠剤など)であれば重量を用いて分取しますが、すべてのサンプルに通用するわけではありません。サンプルが液体であれば、通常、メスシリンダーやピペットを用います。使用者が正しい扱い方を知っていれば、これらは非常に正確で役に立つ道具となります。

同じ分析技術者がサンプリングを行っている限り、測定結果の再現性は非常に高いはずですが、ほとんどのラボではそうではありません。通常、シフト勤務のために複数の人が同じ分析を担当し、その結果、測定結果が異なったり、再現性が低下したりすることがあります。

完全に自動化された容量サンプリングでは、サンプルビーカーにサンプルが入っていることを確認するだけで済みます。接続された分注装置は、ピペッティング技術を用いて要求されたサンプル量を滴定容器に正確に分注します。自動ピペッティングシステムを使用する大きなメリットはその柔軟性です。分析技術者の力量に依存しないため、サンプリングと測定結果の再現性が大幅に向上いたします。

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希釈 / 補助試薬の添加

多くの場合、分析に必要なサンプル量は、センサーを直接入れて分析を開始するには十分な量ではありません。多くの場合、純水 (または別の適切な溶媒) を追加して、電極を浸漬させるのに十分な量にします。滴定は絶対的な分析方法であるため、溶媒がサンプルや滴定溶液と反応しない限り、追加した溶媒の量は滴定の測定結果に影響を及ぼすことはありません。

典型的な例は、石油化学業界のTAN/ TBN分析に使用される溶媒です。この場合、添加溶媒の量を正確に測定し、ブランク値をあらかじめ測定しておくことが重要です。

Determination of the total acid number in petroleum products

Determination of the total base number in petroleum products

正確な量の溶媒を追加する必要のある用途は他にもたくさんあります。たとえば、反応を開始または停止する場合、逆滴定をする場合、または最終的な滴定を行う前に一般的な pH 調整を行う場合などです。

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通常、これらの作業にはメスシリンダーとピペットが用いられますが、これは面倒な作業であることが多くあります。特に多くのサンプルを分析する必要がある場合は、ミスにつながる可能性があります。今日では、多くのスタンドアロン型の自動滴定装置が、滴定溶液を含む試薬を自動かつ正確に添加する機能を備えております。そのため、分析技術者は、面倒な反復的な手動による準備作業に煩わされることがなくなりました。

試薬の添加はサンプルの測定手順の一部であるため、これらの添加量をより簡単かつ正確に文書化することができ(添加量を自動的にソフトウエアに正確に記録することができ)、分析手順のトレーサビリティに関するトラブルはなくなります。

では、そのようなビュレットの性能はどの程度なのでしょうか? メトロームのビュレットは100,000パルスの分解能を持ち、微量でも極めて高い精度で添加することができます。例えば、50mLのシリンダーユニットを使用する場合、1パルスあたり約0.5μLとなります。

電極が満足に作動しなければ、液体のハンドリングが最適であっても最適な測定にはつながりません。

各滴定や測定の核心となるのは、電極です。電位差自動滴定では、指示電極と参照電極の両方を適切に洗浄し、必要に応じて分析の合間にコンデショニングすることが特に重要です。そうしないと、誤った終点が示されたり、不安定な滴定曲線が表示されたりして、不正確で再現性のない測定結果につながります。したがって、適切な電極のメンテナンスも重要です。多くの分析技術者は電極の正しい取り扱い方について訓練を受けていますが、しばらくすると忘れてしまうことがあり、これがトラブルの始まりとなります。

間違った電極の取扱いが、測定結果の違いの原因だと気づくまでには、時間がかかることがよくあります。電極のクリーニング/コンディショニングを行わなかった、あるいはクリーニングの時間で十分でなかったなどの理由で、いくつかの問題が解決される可能性があります。滴定と同様に、手動による洗浄作業も、この作業を行う分析技術者に依存します。自動化された滴定システムでは、測定間で電極が全く同じ方法でクリーニングやコンディショニングが行われるため、このような問題は回避できます。さらに、滴定を自動化することで、これを行う分析技術者がラボにいない夜中にサンプルの測定が終了しても、電極が常に適切に保管されることが可能になります。

以下のコラムでは、一般的な電極の正しい取り扱いに関するより役立つヒントを見つけることができます。

Avoiding the most common mistakes in pH measurement

最後に、適切に処理された電極は優れた測定結果をもたらすだけでなく、寿命が長くなり、消耗品のコスト削減にも寄与いたします。

オートメーション化(自動化)は、簡単な滴定アプリケーションでも効果を発揮します。

ここでは、単純な滴定アプリケーションであってもオートメーション化 (自動化) を検討すべきいくつかの理由を説明しました。可能な限り多くのサンプル前処理作業を自動化に直接組み込むことで、各サンプルが全く同じ方法で処理されることが可能となり、より良い文書化プロセスが実現します。サンプリング、液体ハンドリング、電極処理のハンドリングエラーが減少するだけでなく、再現性が向上します。その上、分析技術者は煩わしいルーチンによるサンプルの前処理や測定に時間を取られることがなくなり、報告業務や自動化されていない他の分析に時間を割くことができるようになります。

 

作成者
Risse

Heike Risse

PM Titration (Automation)
Metrohm International Headquarters, Herisau, Switzerland

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