ラマン分光計の活用方法 – 現場で安全に違法薬物を検出 Part1
2020/11/16
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メタンフェタミン（別名メス(meth)、図1）の乱用は、多くの先進国や発展途上国の社会的、経済的、健康的福祉に影響を与えている最重要薬物問題の一つです。強力な覚せい剤であるメス(meth)の短期使用は、多幸感をもたらし、仕事に関連した活動の能力を向上させる一方で、慢性的な使用は、必然的に中毒を引き起こし、反社会的、時には暴力的な犯罪行為につながり、使用者の全体的な健康と幸福を著しく低下させます。
米国、アジア、ヨーロッパ全土におけるメタンフェタミンの蔓延と使用は、違法下の ”キッチン・ラボ” によって促進されており、これが秘密裏にメタンフェタミンを製造および流通する主な源となっています。
メス (Meth) は、市販の風邪薬から抽出したプソイドエフェドリン（図2）や、必要な試薬が豊富に含まれた市販品から簡単に合成できます。
メタンフェタミンの秘密合成には、さまざまな方法が採用されてきました。しかし、広く普及しているワンポット方式の「シェイク アンド ベイク」は、単純な化学反応とラボのセットアップがあればよく、秘密の小規模調理作業に特に適しています。
メタンフェタミンの生産は、大規模なラボでの作業から、ワンポット法による小規模な合成へと移行しつつあります。この課題に対処するために、警察は、反応容器の内容物を特定し、特定の地理的領域内での生産パターンの認識を確立して、メタンフェタミン製造者を逮捕し、有罪判決を下す必要があります。
このような場合のターゲットは、反応残留物を含む廃棄されたガラス瓶やプラスチック飲料ボトルです (図 3)。
メタンフェタミンの製造を効果的に抑制するためには、メタンフェタミンやその関連前駆体、生成副産物の迅速な確認が必要です。理想的には、疑わしい簡易製造施設の現場で、麻薬取締官や初動対応者がこうした検査を行います。その場での検出には、コンパクトで費用対効果が高く、迅速で、使いやすい操作手順を備えた機器を使用する必要があります。
しかし、前線に立つ警察官らにとって、迅速かつ携帯可能な検出能力は不足しています。これには、pH試験紙、臭気の直接観察、実験関連のゴミや化学薬品の容器の確認、そして信頼性に欠けることで悪名高い比色テストが含まれます。代替手段としては、費用、時間、輸送、および利用可能性の面で複雑なラボ分析が考えられます。
ハンドヘルド ラマン分光計 は、ワンポット容器内の可燃性および爆発性の残留物をフィールドで効率よく識別するための比較的新しい方法です（図4）。サンプリングと識別はプラスチックやガラスの表面を通して行われるため、潜在的に有害な物質への暴露を減らし、警察の安全性が向上します。
この記事では、疑わしい『製造』現場とメタンフェタミン生産を結びつける法医学的証拠を得るために、ハンドヘルドラマンを使用する利点が示されています。MIRA DSは、メトロームが初動対応者の要望に応えるために設計した最高のハンドヘルドラマン分光計です（図5）。
MIRA DSの詳細については、以下をご覧ください。
訓練を受けた分析科学者とは異なり、防衛やセキュリティの専門家は複雑な手順を経ずに即座に結果を得られる分析手法が必要です。Smart Acquire機能により、MIRA DSはワンタッチで操作できます。機器の電源を入れ、画面に一度タッチしてレーザーを起動し、再度タッチしてサンプルを取得するだけで、MIRA DSは自動的に取得パラメータを最適化し、データを処理し、ライブラリ照合でターゲットを識別し、関連する化学的警告とともに結果を1分以内に提供します。MIRA DSをMiraCal Mモバイルソフトウェアと併用すれば、結果を即座に共有し、他者に潜在的な危険を警告することができます。
このトピックに関する詳細については、無料のホワイトペーパーをダウンロードできます。
White Paper: Smart Acquire – Automated Raman Material ID for Defense and Security Professionals
MIRA DSを使用した対応チームの訓練
アメリカ中西部で、メトローム USAのセキュリティおよび防衛部門によって、小規模なメタンフェタミン製造施設の模擬テストが行われ、Civil Support Team（CST）訓練をサポートしました。Civil Support Skills CBRNEコースの訓練中、初動対応者は、化学、 生物学、 放射線、 核、 または高威力爆発物が製造または操作されているラボを認識する方法を学びます。
大量破壊兵器や薬物化学に関する詳細な教育を受けた参加者は、革新的な方法を使用して、現実的な秘密の実験室を再現・評価することが求められます（図6）。訓練を修了したCSTの卒業生は、CBRNE防御シナリオに対応するために必要な技術に関して、独自の能力、専門知識、深い理解を持っています。
CSTのトレーニング中、メタンフェタミンは「シェイク・アンド・ベイク」法を用いて合成されました。この方法は、比較的低い純度の製品にもかかわらず、リソースの限られた実験室でメタンフェタミンを製造するための好まれる方法です。合成に必要な主要な成分は、ハードウェア店や薬局で簡単に入手できます。準備手順、化学反応のステップ、薬物の回収は、空にしたガラス瓶やプラスチック製の飲料ボトル、テープ、チューブを使用して数時間で行うことができます。反応中に爆発のリスクが非常に高いため、プラスチックがガラスよりも好まれます。
スタンドオフアタッチメント についての詳細は、下の動画をご覧ください。
違法薬物の検査はMIRA DSで簡単に行えます。
トレーニング参加者は、MIRA DS（図5）というハンドヘルド型ラマン装置を使用し、ガラス瓶内の液体廃棄物を容器の素材を通して直接解析しました。MIRA DS用のアタッチメントは、簡単な磁気インターフェースで取り付けることができます。図7には、製品の除去後に残った二相の液体層として見られる、実際の一貫式メタンフェタミン反応廃棄物の分析が示されています。
最初に、インテリジェントユニバーサルアタッチメント（iUA）が「ボトル」設定で使用され、ガラスを通して各液体廃棄物層が直接テストされました。このアタッチメントには、物質と直接接触するための「サーフェス」、薄いバリアを通してサンプリングするための「バッグ」、および厚いバリアを通してサンプリングするための「ボトル」の3つの設定があります。
インテリジェントユニバーサルアタッチメント（iUA）についての詳細は、以下の技術資料と動画をご覧ください。
Determination of Container Contents – Simple, Guided Method for Materials ID with Raman
次に、コンタクトボールプローブアタッチメント（CBP）が使用され、廃棄物の識別が確認されました。CBPは、化学的に耐性のあるクイックディップ溶液で、直接サンプリングが可能で、液体や粉末状の固体にも使用できます。
要するに、MIRA DSはアタッチメントを装着し、電源を入れ、レーザーを作動させ、タッチスクリーンを使ってテストが開始されました。搭載されたスマートアクワイアアルゴリズムは、取得パラメーター（レーザー出力、統合時間、平均化など）を自動的に最適化し、スペクトルデータを処理し、ライブラリ検索と照合を行い、1分以内に結果をカラーコード化された化学警告とアラートで報告します。
CSTトレーニングの結果
図8のライブラリスペクトルスタックには、トレーニングコース中に合成に使用された製品、メタンフェタミン、および試薬が含まれています。トレーニングおよび実際のテストシナリオで取得された実際のデータは、標準以下の反応条件やその結果として生じる複雑な化学混合物のため、「乱雑」になることが予想されます。MIRA DSは、この課題に対処するために、取得したスペクトルを違法物質のライブラリスペクトルと自動的に相関させ、混合物マッチングルーチンを実行し、トップマッチを迅速にレポートします。
以下の技術資料ダウンロードできます。「ハンドヘルドラマンを使用した複雑なサンプル中の麻薬識別について」
White Paper: Identifying Narcotics in Complex Samples
要約すると、MIRA DSは、秘密裏のメタンフェタミン合成に使用される一般的な方法の主要な成分を迅速に識別することができます。
これらの結果の注目すべき2つの点：
- 実験スペクトルに現れる追加のピークは、未特定の反応生成物と相関していますが、
- ここでの優れたスペクトル分解能は、非常に高い相関係数（HQI）スコアによって強化されており、ハンドヘルドラマンが現場での分析ツールとして適していることを反映しています。
現実の状況では、初動対応者は訓練を維持し、遭遇する可能性のある多様な材料や方法に関して最新の情報を得る必要があり、ラマンライブラリのエントリーが最新であることを確保することが重要です。
結論
ほとんどの場合、薬物は製造現場から除去されています。したがって、ワンポット法でのメタンフェタミンの現場検査は、実際にはメタンフェタミンの同定には至りませんが、廃棄された化学廃液はメタンフェタミン製造の法医学的証拠となります。これらの結果は、現実のシナリオで法執行機関の手に渡ったハンドヘルドラマンのユニークな能力を示しています。この技術は以下の点で非常に強力です：
- 現場でデータを収集し、技術サポートを強化するために電子的に共有できる。
- 容器の内容物を非接触でサンプリングすることで、調査中の危険を減少させる。
- 結果は数秒で得られる。
- 混合物マッチングにより、現実のシナリオに対応した結果が得られる。
- 結果は、疑わしい製造現場とメタンフェタミン製造を関連付ける法医学的証拠を提供する。
MIRA DS は、法医学的証拠を取得し、薬物犯罪の起訴に成功するための有望で堅牢な分析ツールです。
次回は、ラマン分光計が実際にどのように機能するかを紹介します。
Real World Raman: Simplifying Incoming Raw Material Inspection
