AN-NIR-108
2023-04
近赤外分析計(NIR)によるフルーツジュース中の糖分の品質管理
Fast multiparameter determination of sugars with NIRS
概要
フルーツジュースは爽やかな風味と栄養価の高さ、そして即効性のあるエネルギー源として知られ、多くの量が消費されています。フルーツジュースを製品として考えたときに甘い飲料であるため、製品中の糖の含有量は非常に重要なパラメータとなります。中でも、フルクトース、グルコース、スクロースの含量は品質管理する上で非常に重要な糖類とされています。従来のラボ分析で果汁中のこれらの糖類を測定するには液体クロマトグラフィーに加え、屈折率測定が行われます。このように分析手法が複数ある場合には、全ての分析に技術や時間を必要とする上、それぞれの分析装置を必要です。
近赤外分光法(NIRS)は、果汁中のグルコース、フルクトース、スクロース、Brixを1分以内に同時測定できる分析技術です。さらに、化学薬品は不要で、サンプルの前処理も不要です。
実験
グルコース(0~8g/100mL)、フルクトース
(0~8g/100mL)、スクロース (0~8g/100mL) の範囲で計27サンプルを用意し、定量分析のための検量線モデルを作成しました。サンプルはメトローム社製のDS2500 Liquidアナライザ (400-2500 nm, Fig.1)を用いて透過モードで測定しました。光路長2mmの使い捨てバイアルを使用したため、サンプル容器の洗浄は不要です。
10種類のフルーツジュースのサンプルを測定して、糖類(グルコース、フルクトース、スクロース)の含有量は上記で作成した検量線モデルを用いて評価しました。NIRSに用いた参照値はイオンクロマトグラフ(IC)にて測定した値を使用しましたすべてのNIRスペクトル取得と検量線モデルの開発にはメトローム社製のVision Air Completeソフトウェアパッケージを使用しました。
Table 1. 使用した機器
装置名 | 製品番号 |
---|---|
DS2500 Liquid Analyzer | 2.929.0010 |
DS2500 Holder 2 mm vials | 6.749.2000 |
Disposable vials, 2 mm | 6.7402.070 |
Vision Air 2.0 Complete | 6.6072.208 |
結果
得られたVis-NIRスペクトル(Fig. 2)を用いて グルコース、フルクトース、スクロース、Brixの検量線モデルを作成しました。その検量線モデルは相関図および標準誤差等の統計値を用いて評価しました。
相関図を用いて予測モデルの品質を評価したところ、Vis-NIR予測値と参照値との間に非常に高い相関があることがわかります。それぞれの統計値 (Figure Of Merit, FOM)は、ルーチン分析における予測値の期待精度(Fig.3-6)を示します。
結果 グルコース含有量
Figures of Merit | Value |
---|---|
R2 | 0.9913 |
Standard Error of Calibration | 0.2586 (g/100 mL) |
Standard Error of Cross-Validation | 0.2633 (g/100 mL) |
結果 スクロース含有量
Figures of Merit | Value |
---|---|
R2 | 0.9967 |
Standard Error of Calibration | 0.1682 (g/100 mL) |
Standard Error of Cross-Validation | 0.1876 (g/100 mL) |
結果 スクロース含有量
Figures of Merit | Value |
---|---|
R2 | 0.9902 |
Standard Error of Calibration | 0.2390 (g/100 mL) |
Standard Error of Cross-Validation | 0.2401 (g/100 mL) |
結果 Brix
Figures of Merit | Value |
---|---|
R2 | 0.9985 |
Standard Error of Calibration | 0.2718 (g/100 mL) |
Standard Error of Cross-Validation | 0.2770 (g/100 mL) |