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AN-NIR-097

2021-12

近赤外分析による潤滑油中の全塩基価の測定

Quality control of total base number without toxic chemicals


概要

エンジン用潤滑油中のアルカリ添加剤は、酸の蓄積を防ぎ、その結果として腐食を阻害するために使用されます。全塩基価(TBN)は潤滑油中に存在する塩基性添加剤の量を示し、したがって潤滑油の劣化の尺度として用いることができます。用途によって異なりますが、TBN値は、燃焼エンジン用潤滑油中の7mg KOH/gから、船舶用グレード潤滑油の80mg KOH/gまでとさまざまあります。

潤滑油のTBNの標準試験方法は、ASTM D2896に準拠した電位差滴定法です。この方法では有毒試薬 (例えばテトラエチルアンモニウムブロミド) を使用する必要があり、洗浄作業は非常に注意を要します。この従来分析法とは対照的に、近赤外 (NIR) 分析計(NIR)では、いかなる化学廃棄物も出さず、1分以内でTBN分析を完了します。


実験

DS2500 Liquid Analyzer.
図1. DS2500 リキッドアナライザー

23種の船舶用シリンダ潤滑剤と37種のエンジン用潤滑を2.5mm光路長フローセルにてDS2500リキッドアナライザーで測定を行いました。測定は400~2500nmの全波長域で透過測定モードで行いました。この本測定検討ではフローセルを使ってのサンプルハンドリングは自動化で行いました。スペクトルデータ収集及び検量線予測モデル計算は、Vision Air コンプリートソフトウェアにて行いました。

表1:ハードウェアおよびソフトウェアの構成
装置 メトローム 製品番号
DS2500 Liquid Analyzer 2.929.0010
DS2500 Holder for flow cells 6.7493.000
Vision Air 2.0 Complete 6.6072.208


結果

測定されたVis-NIRスペクトル(図2)を用いて、TBN定量用の検量線予測モデルを計算しました。検量線予測モデルの精度を検証するため、NIR予測値と従来分析値の相関をモデル図を作成しました。それぞれの統計値(FOM)は、日常(ルーチン)分析時の予測精度を表します(図3)。

Selection of Vis-NIR spectra of marine cylinder lubricants and engine lubricants obtained using a DS2500 Liquid Analyzer with a 2.5 mm flow cell.
図2. 2.5mm光路長フローセルを使用してDS2500リキッドアナライザーを用いて測定された船舶用シリンダ潤滑油とエンジン潤滑潤滑油のVis-NIRスペクトル
Correlation diagram for the prediction of TBN in lubricants using a DS2500 Liquid Analyzer. The lab values were determined using titration.
図3. DS2500リキッドアナライザーを用いた潤滑油中のTBNの予測検量線モデル相関図(TBNの従来分析値は滴定で求めました)
DS2500リキッドアナライザーを用いた潤滑油中のTBNの予測検量線モデルの統計値(FOM)
統計値 数値
R2 0.998
検量線標準誤差(SEC) 1.1
交差検定の標準誤差 (SECV) 1.2

結論

このアプリケーションノートでは、船舶用シリンダ潤滑油とエンジン用潤滑油中の全塩基価(TBN)の測定に近赤外(NIR)分析法が応用可能であることが実証されました。従来の湿式化学法(表3)と比較して、NIR分析法ではサンプルの前処理や化学薬品による調整が必要ありませんので、迅速で安全な測定が可能です。

表 3.従来の滴定方分析(ASTM D2896)での測定時間
測定項目 分析手法 測定時間
全塩基価(TBN) 滴定 ∼5–10 分
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