AN-NIR-094
2021-11
近赤外分析計(NIR)による熱分解ガソリン中の臭素価の測定
試薬なしで臭素価の迅速定量
概要
熱分解ガソリン(pygas)とその蒸留物には高レベルの反応性不飽和化合物を含むことが多く、原動機用燃料として使用できません。ジオレフィンの量(Diels-Alder法により測定)に加えて、脂肪族オレフィン成分の総量もモニタリングする必要があります。不飽和炭化水素中の不飽和度(臭素価)を定量化する標準的な方法は滴定による湿式化学法になります。
この湿式化学法では、酸化や置換などの副反応を最小限に抑えるために、試料を5 ℃以下に冷却する必要があります。この湿式化学法とは対照的に、近赤外分析計(NIR)はサンプルの前処理が不要で、臭素価を1分以内に測定することが可能です。ASTM基準D8321とD6122を満たします。
結果
得られたVis-NIRスペクトル(図2)を用いて、熱分解ガソリン中の臭素価を予測する検量線モデルを作成しました。予測検量線モデルの精度を検証するため、NIR予測値と従来分析値間の相関を表示する相関図を作成しました。それぞれの統計値(FOM)を図3に示します。
図2.
DS2500リキッドアナライザーと8mm使い捨てガラスバイアルを用いて測定された種々の熱分解ガソリンのVis-NIRスペクトル
図3.
DS2500リキッドアナライザーを用いた臭素価の予測値と従来分析値の相関モデル図
統計値 | 数値 |
---|---|
R2 | 0.836 |
検量線標準誤差(SEC) | 1.84 |
相互検証標準誤差(SECV) | 1.89 |
結論
このアプリケーションノートでは、熱分解ガソリン ( Pygas )中の臭素価の測定を近赤外分析計(NIR)行えるかの検証をしました。
ASTM D1159(図4および表3)で使用されている湿式化学法とは対照的に、NIR分析法ではサンプルの前処理や化学試薬による調整の必要がありません。臭素価以外にも、NIR分析法により、ジエン値のような追加の品質パラメータも測定することが可能です。
図4.
従来の湿式分析法とNIR分析法との年間ランニングコストの比較
湿式分析法 | NIR分析法 | |
---|---|---|
分析サンプル数(1日当たり) | 10 | 10 |
消耗品・試薬・測定費用 | $6 | $0.50 |
1回の測定にかかる時間 | 30 分 | 1 分 |
合計ランニングコスト/年 | $12,533 | $1,125 |