近赤外分光分析装置に関する質問のうち、代表的なものをQ&A式でまとめました。
Q1 |
近赤外分析計で何が測定できますか? |
A1 |
近赤外光の吸収は分子の官能基(-OH、-CH、-NH、-SH)によるものですので、有機物中のこれら官能基を持つ分子構造に関係した項目となります。 |
Q2 |
赤外分析と近赤外分析の違いは何ですか? |
A2 | 赤外分析(IR)は分子の官能基の基準振動による吸収を測定し、近赤外(NIR)ではその基準振動の倍音や結合音を測定しています。一般的にその倍音や結合音は基準振動による吸収の1/10~1/100の強度に弱まりますので、近赤外分析ではサンプルを希釈(もしくはATR法)することなく、非破壊で測定することが可能です。 |
Q3 | 近赤外分析計を使用するにあたっての消耗品はありますか? |
A3 | 分析用としてランプを光源として用いていますので、光源ランプ(通常はハロゲンランプ)が消耗品となります。その他フーリエ変換型の近赤外分析計(FT-NIR)では、レーザーも用いていますのでレーザーも消耗品となります。 |
Q4 | フーリエ変換型と分散型の違いは何ですか? |
A4 | 赤外線分析計(IR)ではフーリエ変換型(FT-IR)がほとんど製品の光学系で採用されていますが、近赤外分析計(NIR)ではフーリエ変換型と分散型が共存しています。一般的にフーリエ変換型は同時に全波長域のデータを測定し、分散型は時系列的に対象波長のデータを測定します。また分散型の中にも回折格子(グレーティング)方式やダイオードアレイ方式など、様々な種類の光学系があり、目的と用途に応じて使い分けられています。 |
Q5 | 近赤外分析計で液体のサンプルを測定するに際の注意点は? |
A5 | 近赤外分析計では通常、液体サンプルは透過モードで測定することが多いと思いますが、透過測定では光路長(サンプル厚さ)の再現性が重要になりますので、石英セルを使用するなどの光路長再現性に努めます。また水溶液サンプルの場合、そのサンプルの品温によりピーク(-OHの)がシフトしますのでサンプル温度をコントロールしての測定が不可欠になります。 |
Q6 | 近赤外分光法とラマン分光法の違いは何ですか? |
A6 | 近赤外分光法は800-2500nmまでの近赤外光の「吸収」を測定します、一方ラマン分光法はある特定波長の光(レーザー光)を照射し、その「散乱」を測定します。一般的には近赤外分析は定量目的が多く、ラマン分光法は定性目的が多いと言えます。 |
Q7 | ガス(気体)の分析に近赤外分光法は使えますか? |
A7 | ガス(気体)は分子の集合状態が希薄ですので、通常近赤外分光法でスペクトルを測定するということが難しいと言えます。 |
Q8 | 近赤外分析法で測定できないサンプルはありますか? |
A8 | 近赤外(NIR)光は可視(VIS)領域の光に近いですので、見た目に黒いサンプルは測定できません。また分子の集合状態が希薄なガス(気体)の測定も難しいと言えます。 |
Q9 | 近赤外スペクトルはブロードで解析が難しいと思うのですが? |
A9 | ブロードな近赤外スペクトルの解析は多変量解析が必須になります。近赤外分析計には専用の多変量解析ソフトウェアが付属していたり、外部の多変量解析ソフトのデータが取り込めるようになっています。 |
Q10 | 光ファイバーを用いたオンライン測定を考えていますが、注意する点は? |
A10 | 近赤外領域の光ファイバーは通常は石英ファイバーを使用しますが、その長さに応じて短波長側(800-1200nm)と長波長側(2200-2500nm)の光の透過率が減衰しますので、目的とする測定波長域と光ファイバーの長さに十分考慮してください。また光ファイバー敷設時の屈曲半径をあまり小さくすると、光の減衰と長期耐久性の低下が起こりますので、敷設時には十分に注意してください。 |
Q11 | 今後、近赤外分光法の期待される応用範囲は? |
A11 | 近赤外分光法によって物質の情報を明らかにしていく研究は、現在も続けられています。 近赤外(NIR)線は紫外(UV)の光と比べて、照射される光のエネルギーが低いという特徴があり、それが「非破壊」でサンプルを測定できるという利点につながりますので、今後の製造分野や農業分野の製品全数検査、医療分野や生体計測への応用が期待されています。 |