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2017-02

ポータブルラマン分光計を用いたコーヒー品質マーカーであるトリゴネリンの高速かつ選択的な検出


はじめに

Different coffee powders and the molecular structure of trigonelline

食品産業における品質管理は重要な課題です。迅速で効率的かつ選択的な方法を必要とします。例えば製品の識別、不正または偶発的な混入物の検出、特定の保存条件におけるいくつかのバイオマーカーの含有量を特定が挙げられます。これらに関して、金属ナノ構造の光学特性を組み合わせたラマン分光法は食品分析に応用できる強力な手法になります。

表面増強ラマン分光法 (SERS) とは貴金属ナノ構造(例:金や銀のナノ粒子)の光学特性を利用してナノ粒子に吸着した分子のラマンシグナルを増強する技術です。
金属構造の材質、形状、サイズの変化はこれらの特異的なナノアンテナの強化における調節を可能にします。この進歩は農業や産業のニーズに適応した食物代謝物のより低い検出限界を持った新しい選択的なセンサーの設計といった、たくさんの応用につながりました。加えてSERSは測定時間を最小化し、必要なサンプル量を減らすことができます。

この点に関して、ここではポータブルラマン装置 i-Raman Plus 785
を改良された金ナノトライアングルと組み合わせることでトリゴネリン定量の代替法を開発しました。このアルカロイドは、コーヒーやキヌアなど、さまざまな食品に含まれるバイオマーカーです。そして潜在的な健康効果をもたらし、熱分解(例コーヒー生豆の焙煎過程)により様々なフレーバーやアロマ化合物の生成が可能になります。例えば、コーヒーには約2.3 mmolのトリゴネリンが含まれていて、1グラムのコーヒー生豆には約30-65 μmolのトリゴネリンが含まれています。トリゴネリンは品質の指標となり、この技術を使って検査することができます。

BWTek i-Raman Plus 785 in use at a customer's side.

SERSシグナルからトリゴネリン溶液の濃度を定量するため、メルカプトプロピオン酸で修飾された金ナノトライアングルがナノアンテナとして使用されています。
ナノ構造は700-800 nm波長のシグナルを増強するように最適化されています。
1034 cm-1のピーク面積を用いて検量線を作成し、従来のラマン分光法と比較しました。結果は検出限界が低いこの技術の利点を示しており、食品中のトリゴネリンを定量する可能性を示しています。

詳しくは動画をご覧ください。


装置紹介


実験

装置::i-Raman Plusポータブル分光計 785nm励起レーザー

ラマンシフト範囲:150-2800 cm-1

積分時間:50秒

積分回数:10回測定

サンプル:標準トリゴネリン水溶液(10.0 mMから0.5 mM)

メルカプトプロピオン酸で修飾し、脱イオン水に懸濁した金ナノトライアングル(AuNTs)
10mm光路長の液体キュベットホルダホルダー使用


結果と考察

トリゴネリンの250mM溶液を従来のラマン分光法で分析しました。
図 1 のスペクトルは、1034 cm-1で強い信号を示しています。
これはピリジン環ブリージングモードに相当し、水中のこの化合物の濃度モニタリングに使用できます。

Raman spectrum of trigonelline solution at 250 mM
図1. 図1 250mMトリゴネリン溶液のラマンスペクトル

5つの異なる濃度の4つの独立したセット0.5~10 mMの範囲で従来型ラマン分光法とSERSにより分析しました。後者は金ナノトライアングルをトリゴネリン溶液(トリゴネリン:金ナノトライアングル=15:2)と混合する追加手順がサンプル測定前に必要です。すべての場合において、1034 cm-1 で観測された強いシグナルはモニタリングされ、スペクトルウィンドウ中の1010 ~ 1045 cm-1 内のピーク面積を使用して、アルカロイドの濃度を決定しました。結果と検量線(図2)によると、同じ実験条件下ではSERSのS/N比が従来法よりも高い結果となりました。この結果は0.5 mMまではこの方法で濃度を検出可能であることを示しています。

Raman spectra of trigonelline solutions without gold nanotriangles (left) and with gold nanotriangles (right). Inserts show the calibration curves of trigonelline solutions using the 1034 cm-1 peak area within a 1010-1045 cm-1 spectral window.
図2. 図2 金ナノトライアングルを含まないトリゴネリン溶液(左)と金ナノトライアングルを含む溶液(右)のラマンスペクトル ※各検量モデルはトリゴネリン溶液の1010-1045 cm-1 スペクトルウィンドウ内の 1034 cm-1 ピーク面積により計算。

本アプリケーションノートではコーヒーやキヌアなどの食品の品質管理工程を向上させる方法としてSERSを利用した希釈トリゴネリンの簡単な定量法を述べました。


Acknowledgements

We would like to thank Angeline Saldaña Ramos, Yulán Hernandez, and Prof. Betty C. Galarreta of the Departamento de Ciencias – Sección Química, Pontificia Universidad Católica del Perú for sharing their research results. 


参考文献

  1. Galarreta, B.C.; Hernandez, Y.; Saldaña Ramos, A. “Síntesis y aplicación de nanotriángulos de oro en el desarrollo de un método de cuantificación de un potencial alcaloide terapéutico: la trigonelina” Dirección de Gestión de la Investigación (DGI-2016-352) PUCP.
  2. Galarreta, B.C.; Maruenda, H. “Espectroscopía vibracional y de resonancia magnética nuclear en el control de calidad de café orgánico peruano y café instantáneo” Dirección de Gestión de la Investigación (DGI-2014-078) PUCP.
  3. Aroca, R. “Surface-enhanced vibrational spectroscopy” John Wiley & Sons, 2016.
  4. Jaworska, A.; Malek, K.; Marzec, K.M.; Baranska, M. “Nicotinamide and trigonelline studied withsurface-enhanced FT-Raman spectroscopy” Vibrational Spectroscopy (2012) 63,469-476.
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