AN-NIR-116
2023-04
近赤外分析計(NIR)による揚げ物油中のヨウ素価の測定
Straightforward quality control of soybean-palm oil blends
概要
植物油は食品製造に広く使用されている重要な脂質源です。食品製造の際に様々な種類の植物油が利用できますが、同時に高栄養、穏やかな味覚、酸化安定性を兼ね備えた純粋な油ありません。大豆油は2番目に消費量の多い油ですが、加熱により劣化してしまいます。食品業界では一般的に、この問題を克服するために異なる種類の油をブレンドします。ヨウ素価(IV)はその油のブレンド工程をモニタリングするために測定されますが、その値に応じて調整することができます。
IVの低いブレンド油は飽和脂肪酸が多く含まれているため、酸化されにくいということを示しています。食用油内の飽和度を決定する標準的な分析手法には滴定やガスクロマトグラフィがあります。どちらの手法も時間がかかり、測定者の訓練が必要です。これらとは対照的に近赤外分光法(NIRS)による分析はサンプルの前処理や有毒な化学薬品を用いずに短時間でIVを決定できます。
実験
IVの値が60~130 g/100 gの21点のブレンド油(大豆‐パーム油)をメトローム社製 DS2500 Liquidアナライザーで測定しました(図. 1)。 すべてのブレンド油を確実に液状にするためにバイアルヒーターでサンプルを60 ℃に加温しました。
アンプルはスペクトルの再現性を得るため、8 mm使い捨てガラスバイアルに入れ、透過モード、60 ℃にてスペクトルを収集しました。スペクトル取得と検量線モデルの作成にはメトローム社製のVision Air Completeソフトウェアにて行いました。
表1. 使用したハードウェアおよびソフトウェアの概要
機器 | 製品番号 |
---|---|
DS2500 リキッドアナライザー | 2.929.0010 |
NIRS XDS Vial Heater | 2.921.9010 |
DS2500 Holder 8 mm vials | 6.7492.020 |
Vision Air 2.0 Complete | 6.6072.208 |
結果
取得したVis-NIRスペクトル(図. 2)を用いて、IVの検量線モデルを作成しました。相関図を用いて検量線モデルの性能を評価しました。Vis-NIRによる測定と従来のラボ分析手法の間にきわめて高い相関が得られました。(R2>0.999)。クロスバリデーションをした際の標準誤差(SECV)はルーチン分析中に期待される精度を示します(表 2)
結果 ヨウ素価
Figures of Merit | Value |
---|---|
R2 | 0.999 |
Standard Error of Calibration | 0.20 g/100 g |
Standard Error of Cross-Validation | 0.22 g/100 g |
結論
食用ブレンド油中のヨウ素価をモニタリングすることは、食品を製造する上で重要な特性を持つ植物油とするために重要な役割を持ちます。本アプリケーションノートでは、メトローム社製DS2500 Liquidアナライザーを品質管理に使用した場合のメリットを示してきました。
AOCS Cd 1e-01標準に従って分析する従来の手法と比較して、NIR分光法を用いることで、化学薬品を必要とせず、また、1分以内に測定が完了するため時間の節約となります。これらは最終的に作業負荷の軽減(Table 3)と、品質管理のランニングコストの最小化につながります。
表2. フライ油中のヨウ素価の各統計値
パラメーター | 分析手法 | 測定にかかる時間 |
---|---|---|
ヨウ素価 | 滴定 (AOCS Cd 1b-87) | 30~2 時間 |
Internal reference: AW NIRS SG-0003-052018