AN-NIR-111
2024-08
近赤外分析による食用油のヨウ素価、 FFA、屈折率、脂肪酸組成の測定
数秒で食用油のマルチパラメーターを測定可能
概要
食用油は私達の生活に不可欠な食品です。その油質を評価するためにヨウ素価、遊離脂肪酸(FFA)、屈折率、脂肪酸組成などの種々のパラメータを用います。脂肪酸組成分析は、食用油中に含まれる種々の異なる
脂肪酸の濃度を測定します。必須リノレイン酸(C18:2)およびα‐リノレン酸(C18:3)の含有量は、その食用油製造者にとっては大変重要なパラメーターと言えます。
滴定分析やガスクロマトグラフィーのような従来の分析手法は非常に時間のかかる、またしばしば、健康リスクを引き起こしかねい有害は溶剤試薬を使用して、分析コストを増加させることがあります。これらの従来
の基準分析法とは対照的に、OMNIS NIRアナライザーによる近赤外(NIR)分析法によって、サンプルの前処理なしで、わずか数秒で、このような食用油質の重要パラメーターを同時に測定することが可能になります。
実験
8mm光路長の使い捨てガラスバイアルを用いて、OMNIS NIRリキッドアナライザーの透過測定モード(1000~2250nm)で様々な食用油(ひまわり油、
菜種油、ごま油、大豆油を含む)を1000サンプル以上測定しました。OMNIS NIRリキッドアナライザーの温調機能は40℃ に設定し、精度良く再現性のある測定が可能となりました。専用のOMNISソフトウエアを用いて全スペクトルデータ測定、検量線予測モデルの計算を行いました。
装置 | 製品番号 |
---|---|
OMNIS NIR Analyzer Liquid | 2.1070.0010 |
Holder OMNIS NIR, vial, 8 mm | 6.07401.070 |
Disposable vial, 8 mm, transmission | 6.7402.240 |
OMNIS Stand-Alone license | 6.06003.010 |
Quant Development software license | 6.06008.002 |
結果
測定されたNIRスペクトル(図2)を用いて検量線予測モデルを作成し、ヨウ素価(IV)、FFA、屈折率、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノレイン酸(C18:2)、α-リノレン酸(C18:3)の8種類の油質評価項目すべてを定量しました。
全ての項目のNIR予測値と従来分析値に高い相関関係(R2 > 0.94)が得られ、精度の良い検量線予測モデルが作成可能と判断されました。全サンプルの内、25%のサンプルをバリデーションセットとし、残りの75%のサンプルをがキャリブレーションセットとして選択し、それぞれの項目の各種統計値(FOM)を評価し、それぞれの項目の検量線予測モデルは日常(ルーチン)分析に使用可能であると判断されました(図3-10)。
結果:IV(ヨウ素価)
項目 | SEC (mg/100g) | SECV (mg/100g) | SEP (mg/100g) | R²CV |
---|---|---|---|---|
IV | 0.47 | 0.48 | 0.50 | 0.999 |
結果:FFA(遊離脂肪酸)
項目 | SEC (%) | SECV (%) | SEP (%) | R²CV |
---|---|---|---|---|
FFA(遊離脂肪酸) | 0.12 | 0.12 | 0.13 | 0.946 |
結果:屈折率
項目 | SEC (%) | SECV (%) | SEP (%) | R²CV |
---|---|---|---|---|
屈折率(RI) | 0.00011 | 0.00012 | 0.00012 | 0.998 |
結果:C16:0(パルミチン酸)脂肪酸含有量
項目 | SEC (%) | SECV (%) | SEP (%) | R²CV |
---|---|---|---|---|
C16:0(パルミチン酸) | 0.26 | 0.27 | 0.31 | 0.958 |
結果:C18:0(ステアリン酸)脂肪酸含有量
項目 | SEC (%) | SECV (%) | SEP (%) | R²CV |
---|---|---|---|---|
C18:0(ステアリン酸) | 0.26 | 0.27 | 0.25 | 0.936 |
結果:C18:1(オレイン酸)脂肪酸含有量
項目 | SEC (%) | SECV (%) | SEP (%) | R²CV |
---|---|---|---|---|
C18:1(オレイン酸) | 0.64 | 0.67 | 0.71 | 0.999 |
結果:C18:2(リノレイン酸)脂肪酸含有量
項目 | SEC (%) | SECV (%) | SEP (%) | R²CV |
---|---|---|---|---|
C18:2(リノレイン酸) | 0.63 | 0.77 | 0.84 | 0.999 |
結果:C18:3(α-リノレン酸)脂肪酸含有量
項目 | SEC (%) | SECV (%) | SEP (%) | R²CV |
---|---|---|---|---|
結果:C18:3(α-リノレン酸)脂肪酸含有量 | 0.32 | 0.36 | 0.36 | 0.989 |
結論
このアプリケーションノートでは、食用油メーカーの分析ラボにおいて、各種の重要な品質管理項目をOMNIS NIRリキッドアナライザーで測定可能であることを表しています。
NIR分析法はサンプル前処理や化学溶剤を使用しませんので、わずか数秒で全項目の同時測定が可能です。サンプル前処理を必要としませんので、最終的には作業負荷(表2)及びその関連コストの削減、加えて分析人員のより安全な作業が可能になります。
表2:食用油中のヨウ素価、FFA含有量、屈折率、脂肪酸組成の測定の従来分析法の概要
項目 | 分析手法 | 測定時間 |
---|---|---|
よう素価 | ガスクロマトグラフィ | ~30分 サンプル前処理(メチルエステル化+試料調製) + ~20分 GC測定 |
FFA含有量 | 滴定 | ~10分/サンプル |
屈折率 | 屈折率計 | ~2分/サンプル |
脂肪酸組成 | ガスクロマトグラフィ | ~30分/サンプル |
Internal reference: AW NIR CH-0074-042023