AN-R-009
2024-07
脂肪酸メチルエステル(FAME、バイオディーゼル)の酸化安定性試験
Reliable and accurate determination of the oxidation stability of biodiesel according to EN 15751
概要
脂肪酸メチルエステル(FAME)としても知られるバイオディーゼル燃料は、石油系ディーゼル燃料と同様に使用されます。脂肪酸メチルエステル・バイオディーゼル燃料は、ディーゼルエンジンで使用するために石油ディーゼル燃料と任意の比率で混合することもできます[1]。バイオディーゼル燃料は、排出ガスが少なく、持続可能であり、生分解性があり、環境に優しく、潤滑性に優れています。植物油、動物性油脂、有機廃棄物に含まれるグリセリドを一価のアルコール(メタノールやエタノールなど)でトランスエステル化すると、FAMEを合成することができます。
添加された酸化防止剤 (アスコルビルパルミテートなど) は、FAME の自動酸化を抑制し、保存期間を延ばすのに役立ちます。バイオディーゼル燃料の品質と抗酸化能力の両方をモニタリングする必要があります。測定すべき最も重要なパラメータの 1 つは、酸化安定性です。893 プロフェッショナル バイオディーゼル ランシマットは、欧州規格 EN 14112、EN 15751、および EN 16568 に従いバイオディーゼル燃料の酸化安定性を測定します。
サンプル
この技術資料は、酸化防止剤の添加有無のバイオディーゼル燃料を用いて測定された結果を説明します(表1)。
酸化防止剤を添加したバイオディーゼル燃料には、100 mLのバイオディーゼル燃料にパルミチン酸アスコルビル10 mgを添加しました。
実験
酸化安定性(酸化誘導時間)の測定には、は893 プロフェッショナル バイオディーゼル ランシマットを用いました (図1)。
測定するためには、適量のサンプルを反応容器に秤量し、測定を開始するだけです。
バイオディーゼル・ランシマット法では、サンプルは 一定温度(80 ~ 150 °Cの間) でキャリアガス(空気)にさらされます。揮発性の高い二次酸化生成物は空気流とともに測定容器に移され、測定溶液に吸収されます。
ここでは導電率が継続的に記録されており、二次酸化生成物の吸収は導電率の増加につながります。この顕著な導電率の増加が発生するまでの時間は「酸化誘導時間」と呼ばれ、酸化安定性の優れた指標となります(図2)。
測定結果
サンプル (n = 4) | 平均値 [h] | 変動係数 SD(rel) in % |
---|---|---|
バイオディーゼル燃料(酸化防止剤なし) |
6.15 | 1.1 |
バイオディーゼル燃料(酸化防止剤あり) | 13.55 | 0.9 |
結論
バイオディーゼル燃料およびバイオディーゼル混合燃料の酸化安定性は、車両燃料または暖房用燃料として販売されるバイオディーゼル燃料の FAME (脂肪酸メチルエステル) 分析の品質要件を定義する一連の規格における重要な品質管理パラメータです。
さらに、欧州規格 EN 15751に従い酸化安定性試験を行うことで、酸化防止剤を添加有無のバイオディーゼル燃料の試験結果を比較することができます。これにより、保存期間の設定、酸化防止剤の効果、耐久性、まだ安定しているサンプルと既に腐敗しているサンプルとの比較値について結論を出すことができます。
ランシマットを用いれば、この品質パラメータを一度に8つの異なるサンプルについて簡単かつ同時に測定できますので、スループットが向上します。ランシマットの状態は内蔵ディスプレイで表示されます。装置の各測定位置のボタンで、個々の測定を開始できます。実用的なディスポーザブル反応容器と食器洗浄機対応のアクセサリーの使用により、洗浄作業を最小限に抑えることができます。これにより、時間とコストが節約され、精度と再現性が大幅に向上します。
本技術資料では、バイオディーゼルへ酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル100 mg/L)の添加有無サンプルについて酸化安定性試験を行いました。酸化防止剤を添加したバイオディーゼルは、酸化誘導時間が著しく長くなり、そのため保存期間が長いことが示されました。
参考文献
- Metrohm AG. Oxidation Stability of Diesel, Biodiesel, and Blends – Reliable Oxidation Stability Measurements in Diesel, Biodiesel, and Blends According to EN 14112, EN 15751, and EN 16568; AN-R-034; Metrohm AG: Herisau, Switzerland, 2024.